以前と比較してヘリコバクター・ピロリ菌の罹患率が低下しており、私が消化器内科の仕事をするようになった20数年前と比較すると胃十二指腸潰瘍を生じて吐血などの消化管出血を発症する方はかなり減りました。一方で逆流性食道炎のかたは増えました。原因としては衛生環境改善や除菌治療によるヘリコバクター・ピロリ菌の罹患率の低下、高脂肪食などの食事の欧米化、高齢化、腹圧がかかるような肥満や過食や前かがみなどの体勢やベルトの閉めすぎ、飲酒、喫煙などがあげられます。
食道には胃のような酸に対する防御機構がないため、逆流性食道炎は胃酸が逆流して粘膜に炎症を起こしてただれたり潰瘍を生じたりして起こります。
代表的な症状は胸やけ、呑酸(すっぱいものがこみ上げる感じ)で、ほかに胸の痛み・つかえ感、げっぷや吐き気、みぞおちなど上腹部の痛み、胃のもたれ感などがあります。またのどの違和感やつかえ感、声のかすれ、慢性の咳、喘息のような症状で耳鼻咽喉科や呼吸器内科を先に受診され逆流性食道炎の可能性を指摘されることがあります。診断はこのような症状を問診でうかがい、内視鏡検査で食道の状況を確認して行います。検診で行うバリウム検査では逆流性食道炎の状態を正しく評価することは難しいため注意が必要です。また逆流性食道炎の症状と思っていて放置していると実は食道癌だったということもあり得ますので、症状が持続している場合に長く検査をしていないときは時々内視鏡検査を行っておくことが望まれます。
治療は胃酸の分泌を抑えるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー、プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミン受容体拮抗薬(ガスターなど)を中心に、粘膜保護剤や消化管運動改善薬、漢方薬などを適宜併用するなどお薬の治療が中心になります。
薬の治療とともに重要なのが生活習慣の改善です。
まず重要なのは食事習慣です。過食で満腹になると胃の壁が伸びることで食道胃接合部のしまりが緩くなり胃液が食道に逆流しやすくなります。また過食により太ってしまうと胃が圧迫されることによっても逆流が起こりやすくなります。
また胸やけを起こしやすい食物を避けることも重要です。具体的には脂っこい食事、酸味が多い食べ物、炭酸飲料、辛すぎる食べ物や熱すぎる食べ物、甘味やチョコレートなどがあげられます。嗜好品としてはたばこやアルコールは食道胃接合部のしまりを緩める、コーヒーやアルコールは胃酸分泌を増やすといった点から摂りすぎは避けたほうがよいでしょう。糖尿病や高脂血症や脂肪肝と同様に逆流性食道炎でも腹八分目を心掛けることが大切です。
日常生活の注意としては、肥満を解消する、お腹をしめすぎない、前かがみの姿勢を長時間とらない、腹圧がかかる運動等は避ける、食後すぐに横にならない、寝るときは胃酸が逆流しやすい体位を避ける(具体的には頭を高くして寝る、左側を下にして寝ることを心掛ける)ことなどを留意してみてください。
適度な運動、背筋が曲がらないよう伸ばす、規則正しい食事なども逆流性食道炎を軽減するのに役立つものと考えます。
症状でお困りの場合や気になることがあればどうぞご相談ください。






